Here We Come!（勝負はここからだ！）

>>100
これ間違いなく本人

　温かい拍手がマイコラスを包んだ。８回まで１２２球だったが、２点リードの９回は志願した。歯を食いしばって打者に向かったが、１死で福田にソロを浴び、続く高橋に安打されてタオルが投げられた。完投できず悔しさが残るも、今季チーム最多の１３９球を投げた助っ人をベンチは笑顔で迎えた。カミネロが後続を抑えてゲームセット。自己最多の１４勝目を飾ってようやく笑うことができた。
　３位以内を狙うための志願だった。レギュラーシーズン最後であろう先発登板。連日リリーフ陣はフル回転。今季２度目の中４日だったが、試合前から一人で投げきると決めていた。「今季は完投がなかったので何とかこの機会にと思ってた。完投はできなかったけど、勝ててよかった」。８回１／３を６安打１失点、９奪三振。諦めない気持ちを仲間に示す熱投だった。

　前回２２日の広島戦（マツダ）は５回５失点で８敗目を喫した。変化球の精度を課題に挙げリリースポイントと指の感触を修正。初回２死一、三塁で福田に大きなカーブで見逃し三振。２回からテンポよくリズムを刻み１５０キロ台の直球を軸に多彩な変化球で中日打線を翻弄した。６回から毎回走者を背負ったが中日打線を翻弄。指揮官は「連打も浴びているし、球数はいってたしね。本人も正直しんどかったと思う」と功労をたたえた。
　勝ちへの執念がつないだ。「チームには素晴らしい投手がたくさんいる」と菅野や田口などの試合、ブルペンなどをじっくり見て、気になることがあれば自ら質問をしに行く。Ｇ球場の投手練習では「ハタケ！」と６歳年下のルーキーを呼び出し、カットボールについて質問した。「（畠は）最近調子がいい。学ぶところはいっぱいあるよ」と、日々の研究で自らの投球につなげている。そうした行動が先発陣の刺激になり、相乗効果ももたらした。
奪三振王手中　奪三振は１８７で、２位菅野とは１６差とタイトル獲得がほぼ確定。それでも「そうなればうれしいけど、プレーオフに向けて勝つことが重要だと思う」と気を引き締めた。

　チームは今季７度目の４連勝。４月７日以来、今季最多タイの貯金５だ。去年に並ぶ７１勝で０７年から１１年連続のシーズン勝ち越しも決定。１３９球を投げたことでこの試合が助っ人のシーズン最終先発となることが濃厚で、残り３戦の先発は畠、田口、菅野に託す。だが、自身の状態次第では中継ぎ待機も考えられる。お立ち台では「Ｈｅｒｅ　Ｗｅ　Ｃｏｍｅ（ここからだ）」と声を上げた。まだまだ、今年の戦いは終わらせない。

　それにしても、マイコラスの持っている力を再認識させられた。初回から１５０キロを超えるストレートで飛ばしに飛ばし、落差の大きなカーブで中日打線を翻弄した。９回、福田への１球を除けば、コントロールにも狂いがなかった。この投手が積極的に振ってくる広島打線にだけ勝てないというのを改めて不思議に感じたほどだ。
　前日の菅野が９８球無失点で降りた。マイコラスも中４日の影響を感じさせないマウンドでつないだ。９回もマウンドに上がり、１３９球を投げたことで、マイコラスが１０月３日のヤクルトとのシーズン最終戦（神宮）、中５日で先発する可能性は低くなった。３０日からの残り３試合は順当なら、畠、田口、菅野の先発になるのだろうが、３試合ともベンチに入った投手陣は総動員だ。もちろん、最終戦はマイコラスもリリーフ登板できる態勢で臨むだろう。
　この２試合、菅野もマイコラスもよく投げた。だが、打線は相変わらず援護が遅い。もう少し序盤に点を取って、先発投手を楽にさせてやってほしい。投手陣も野手陣も、自力では何ともできないのだから、次の試合に望みをつなぐ試合だけは続けていってもらいたい。

　9月に入り､クライマックスシリーズ(CS)争いが佳境を迎えたある日｡ジャイアンツ球場で練習を終えたマイルズ･マイコラス(29)が､チームと自らの状況を重ね合わせてこんなセリフを口にした｡
　｢2匹のネズミがいる｡2匹はクリームが入った容器に落ちた｡最初のネズミはすぐに諦めておぼれてしまったが､2匹目のネズミはクリームがバターに変わるくらい一生懸命抜け出そうと頑張っている｡僕は2匹目になりたい｣
　レオナルド･ディカプリオ演じる天才詐欺師が連邦捜査局(FBI)から逃げ回る映画｢キャッチ･ミー･イフ･ユー･キャン｣で､主人公の父が語った言葉が基になっている｡苦境は自らの力で切り開くしかない――｡そんな意味が込められたこの言葉は､右腕が何よりも大事にしている姿勢でもある｡
　5月5日を最後に1か月以上勝ち星から見放された時も､｢目の前の試合が､そのシーズンで一番重要な試合｡相手がどこというのは関係ない｣と懸命に腕を振り続けた｡6月9日の日本ハム戦で8回1失点の好投を演じ､約1か月ぶりの白星を手にした｡それは､チームが球団ワーストの13連敗を止めた試合でもあった｡

　今季最後の先発登板となった9月27日の中日戦も､その言葉を実践するようなマウンドだった｡初回に20球以上投げて早い回の降板が懸念された中､続投を志願して､九回途中まで1失点｡中4日ながら､139球の熱投で勝利に導いた｡夏場も疲れを見せず､7月以降の14試合で8勝4敗､その間の防御率1点台｡淡々と投げているように見えたマイコラスには､いつでも熱いハートが宿っていた｡
　先発3本柱の一角として､来日3年目で自己最多の14勝(8敗)｡抜群の安定感で､チームを支え続けた｡
　ちなみに､映画のセリフ｡正確には､｢2匹目のネズミはクリームをバターに変えて脱出に成功した｣である｡

どうして巨人は４位だったんだろうね

マイコラスクビで良いからメッセンジャー欲しいな